研究概要 |
本研究プロジェクトは,これまで主として高分解能電子顕微鏡法で進めてきた準結晶および周辺結晶相の構造解析に,定量的解析に優れたX線解析法および高次元投影法を連携して,わずかな組成変化によって敏感にその安定性が変化する準結晶および周辺結晶相の安定性を議論するのに十分な精密構造解析を目的としている.本年度は,当初の研究計画に基づき微弱なX線散乱強度を迅速に測定可能なイメージングプレート方式を応用したX線構造解析装置を導入,X線構造解析システムの整備を中心に研究計画を遂行した.具体的研究としては,高分解能電子顕微鏡法によるAl-Pd-Mn decagonal準結晶相Al-Ni-Fe decagonal準結晶相およびAl-Rh-Cu decagonal純結晶相の構造解析(既報),またX線回折法によるAl-Pd-Mn-Si系2/1近似結晶およびAl-Co-Pd系近似結晶の改造解析(一部既報)を行ない,またマキシマムエントロピー法によるZn-Mg-Y icosahedral準結晶相の構造解析も大きく親展した(既報).たとえばAl-Ni-Fe decagonal準結晶相の研究では,Al-Ni-Fe decagonal相は欠陥および歪みの少ない準結晶であること,さらにこの準結晶の構造は1.2nmのdecagonal-atom-columnで説明できることを高分解能電子顕微鏡法によって明瞭に示した.またAl-Pd-Mn-Si系2/1近似結晶のX線構造解析では,正二十面帯対称を示す約2.0nmのatom-clusterが構造単位となっていることを明らかにした.本研究で見いだしたatom-clusterはicosahedral準結晶相の基本構造単位であることが予想され,今後の研究展開が非常に興味深い.
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