研究概要 |
1 大規模現象のデータ解析: 全球衛星観測およびそれに基づく再解析データの充実をふまえ,解析期間を最大約40年間に延長し,南北両半球の対流圏・成層圏大循環の年々変動を詳しく調べた.特に,各種波動が平均東西風の生成・維持・変化に及ぼす力学効果を重点的に解析した.これらの統計解析の結果,下層大気(対流圏)と中層大気(成層圏)の力学結合,および赤道大気と中高緯度大気の長周期変動の関係に関し幾つかの新しい知見が得られた. 2 中小規模現象のデータ解析: 中間規模波動に関する従来の事例解析を発展させ,季節変化および全球にわたるクライマトロジーを作りあげ,さらにその成因・維持機構を背景場の渦位分布と結び付ける力学解析を行なうことによって明らかにした. 3 大規模現象の数値実験: 3次元の全球大気モデルを開発・整備して,総観規模波動と惑星規模の流れが相互作用して大気循環の長期変動をつくりだすメカニズムを調べた.傾圧擾乱,地形により制御されたロスビー波,および帯状平均流の相互作用により生起する長期変動の力学を強制の大きさをかえたパラメータ実験により明らかにした. 4 中小規模現象の理論: 準地衡方程式系を用いて中間規模波動の存在メカニズムに関する理論的考察を行なった.その結果,中間規模波動は中緯度対流圏界面付近に局在する大きな正の渦位勾配に捕捉された中立モードとして解釈できることを示した.
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