研究概要 |
炭化塩-珪酸塩混合相堆積物に及ぼす続成作用の種々の要因について,最終氷期以降に形成された砂丘層を用いて予察的な検討を実施した.検討材料として,鹿児島県喜界島に発達する完新統新規砂丘層を用いた.調査地点(喜界島湾町南部)では,本砂丘層は,主として有孔虫・生物遺骸片粒子ならび少量の砕屑性石英粒子からなる未固結炭酸塩砂であり,層厚10m以上にわたって発達する.この砂丘層中には約3,000〜3,500年前に形成された層厚40m程度の古土壌層を狭在しており,その上下では堆積相に明瞭な違いは認められない.この古土壌層を狭む上下の未固結炭酸塩砂層について続成作用の違いについて検討した結果,X線回析装置(既存)を用いての炭酸塩鉱物組成分析では,古土壌層上下の未固結炭酸塩砂の鉱物組成には大きな違いは認められず,ほぼ現世浅海成炭酸塩堆積物の組成と一致した.一方,古土壌層直下では明らかに古土壌表面に向け,低Mg方解石の量比が増加する傾向が認められた.また本年度科研費により新規導入した安定同位体質量分析装置による炭素・酸素同位体組成分析では,古土壌上下の未固結炭酸塩砂の同位体組成は現世浅海成炭酸塩堆積物の組成と一致したのに対し,古土壌層直下では明らかに古土壌層表面に向け,炭素,酸素共に軽くなる.これらの結果は,古土壌層形成のための地表露出に伴い,淡水性続成作用により鉱物組成・同位体組成が変化したことを示唆しており,続成作用が堆積物に及ぼす影響は1〜2千年のオーダーで起こりうることが新たな知見として得られた. また,最終氷期以降の堆積物を含むピストンコアについて,AMS^<14>C年代測定を行った.環境変動を明らかにするために,コア試料の処理及び浮遊性有孔虫化石による検討を行い,最終氷期から温暖化する時期に,黄河からの大量の淡水の影響があるとの新知見を得た.
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