火星起源隕石の岩石学的・地球化学的手法による火星の起源と進化に関する研究

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08404031
• 研究種目: 基盤研究(A)
• 研究機関: 岩手大学
• 研究代表者: 矢内 桂三 岩手大学, 工学部, 教授 (40004494)
• キーワード: 火星起源隕石 / 火星の生命 / ALH84001 / Yamato-793605 / ALH-77005 / Chassigny / Nakhla / Shergotty

研究概要

1996年8月NASAは南極から採集した火星起源隕石(火星隕石)ALH84001から生命の存在を確認したと報告した。このことを契機に火星の生命とこれを含む火星隕石が急に注目された。私は2個の火星隕石を発見した事情からこのことに大変興味を持ち、特に岩石学的立場から生命を含むとされる隕石と、他の11個の火星隕石の岩石学的特徴を明らかにすることを目指して研究を進めた。
初年度は次のような成果を得た。
1.Yamato-793605隕石、16g:火星起源であることを同定した。酸素同位体の測定は火星隕石の同定に不可欠であり、このためシカゴ大学と共同研究を行い。Yamato-793605が火星由来であることを確認した。
2.隕石を火星起源か否かを岩石学的に同定する際、斜長石の組成がキ-になることを見出した。エコンドライト隕石の斜長石はAn_<70〜100>になるのに対し、火星隕石の斜長石はAn_<50>前後で両者には明瞭な差がある。斜長石の組成を調べることにより、従来エコンドライトの中のダイオジェナイトに分類された隕石の中から新たに火星隕石を確認する作業を進めた。
3.火星起源と確認されている12個の隕石のうち、すでに11個の試料を入手し、岩石学的な比較を行っている。12個の火星隕石は次の岩石学的グループに分類される。ダンカンラン岩(1個)、レールゾライト/カンラン石ウェブステライト(3個)、ウェールライト(3個)、ハンレイ岩-弦武岩(4個)及び斜方輝石岩(1個)である。
なお、現在確認されている火星起源隕石は次のとうりである。
ALH-77005、ALH84001、Chassigny、EETA79001、Governadar Valadares、Lafayette、LEW88516、Nakhla、QUE94201、Shergotty、Yamato-793605、Zagami

研究成果

• [文献書誌] Keizo YANAI: "Newly indentified martian meteorite Yamato-793605 form Antarctica" Abstracts of the 30th lnternational Geoiogical Congress(IGC,Beijing). 20-1-16. 508 (1996)
• [文献書誌] 矢内桂三: "火星起源SNC隕石の分類と問題点" 三鉱学会平成8年度秋季連合学術講演会要旨集. 99 (1996)
• [文献書誌] 矢内桂三: "火星隕石とはどんな石か?" 三鉱学会平成8年度秋季連合学会 火星隕石生物発見緊急シンポジューム. (1996)
• [文献書誌] 矢内桂三: "Varieties of the martian meteorites based on their lithologies,comopitions and ages" 日本惑星科学会1996年秋期講演会予稿集. 68 (1996)
• [文献書誌] Keizo YANAI: "Newly indentified martian meteorite Yamato-793605 from Antarctia" Proceedings of the 30th International Geological Congress. (in press). (1997)
• [文献書誌] Takashi MIKOUCHI: "Mineralogical consideration on possible microfossils in martian meteorite ALH84001" Mineralogical Journal. (in press). (1997)
• [文献書誌] 野村哲(編集委員長)ほか: "新版 地学辞典" 株式会社 平凡社, 1,807 (1996)