研究概要 |
火成活動と鉱化作用の時空関係を明らかにすると共に,周辺の堆積岩を含めて揮発性成分とその安定同位体比に注目し,鉱液の起源としてマグマ水,天水,海水などがどのように混在しているかを明らかにすることが当研究の目的である。 平成8年度に設置・立ち上げた安定同位体比測定装置VG-Optimaを用いて昨年度の菱刈鉱床および周辺火山岩の測定に引き続き,平成10年度は九州地域の花崗岩およびその周辺部の鉱床と堆積岩の硫黄同位体比を測定した。花崗岩の場合は0‰から-10‰にばらつくことがわかった。さらに蛍光X線分析、原子吸光分析、ICP分析を行い,九州地域の深成岩について,主要・微量元素分析,および造岩鉱物の化学組成分析を行った。その結果,島弧型花崗岩の非対称性は主要元素のみならず,希土類元素やハロゲン元素,硫黄同位体組成においても明瞭であることが確認できた。すなわち,第三紀花崗岩のうち日本海および東シナ海側に貫入する花崗岩はより苦鉄質であり,磁鉄鉱系に属する。硫黄同位体比は高くほぼO‰になる。また,コンドライトで規格化した希土類元素はLREE/HREE比が小さくEu負異常が認められないか弱い。ハロゲン元素のうち塩素が一様に高い傾向を示す。これに対し,太平洋側に貫入する尾鈴山,高隈,大隅の各花崗岩体ではより珪長質であり,チタン鉄鉱系に属する。硫黄同位体比は低いものが多い。また,コンドライトで規格化した希土類元素はLREE/HREE比が大きくEu負異常が認められる。ハロゲン元素のうち塩素が低い傾向にあるが,尾鈴山の半深成岩は異常に高いことがわかった。 酸素と炭素の同位体比を測定に取り組んだ。基本的な抽出ラインおよび測定精度についてはほぼ満足のいく結果を得たが,レーザー光による微少部の分析方法は現段階では充分な精度が得られていない。次年度以降の課題である。
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