研究概要 |
本研究の目的は,火成活動と鉱化作用の時空関係を明らかにし,鉱液の起源としてマグマ水,天水,海水などの役割を明らかにすることである。 1) 北薩地域の浅熱水性金鉱床について検討した結果,珪長質マグマのキューポラ状頂部が揮発性成分に飽和し熱水が発生した。熱水は酸化的であり硫黄はSO_2の形をとっていた。塩素が金属と錯イオンを作ってマグマから運搬した。四万十累層群で熱水は還元されながら冷却し,塩素の錯イオンがこわれSO_2はHSなどの還元的な種に変化した。その結果,金はAuCl_2からAu(HS)_2に変換された。熱水はさらに上昇し四万十累層群最上部において酸化的な地下水と遭遇することにより,今度はAu(HS)_2がこわれて金が沈澱した。最初はマグマ水が金を輸送したが,四万十累層群では生物起源の有機物が重要な役割を演じ,四万十累層群最上部で天水が金の沈殿剤として関与した。類似の現象をパプアニューギニア,ラドラム金鉱床でも考察した。 2) 次に鹿児島湾に分布する熱水系について硫黄同位体を中心に調査した。マグマ性ガスと海水が混合し,海底近くで生物活動も関連して複雑な系が成立していることを明らかにした。メキシコ,テイサパ海底熱水鉱床では海水と生物(堆積岩)の関与が極めて大きいことがわかった。 3) 九州地域の深成岩,火山岩,基盤岩および鉱石について主要・微量元素分析,および造岩鉱物の化学組成分析行った。島弧型花崗岩の非対称性をハロゲン元素やREEなどの微量元素,硫黄同位体からも検証し,鉱液は本源的には地殻下部ないし中部によって規制されると推定できた。 4) この研究で軽元素安定同位体比装置を有効に使用した。立ち上げののために東北大学やペンシルヴァニア州立大学に赴き実験方法を検討した。絶対誤差±0.1%で測定可能にすると共に,レーザ局部分析法も確立した。
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