研究概要 |
マントルの物質構成とその進化を解明するために、構成鉱物の高温高圧相平衡を高圧実験と熱量測定の両面から解明した。また、高温高圧下での元素分配実験を行い、高精度の分配係数を得た。 1. Mg_2SiO_4-Fe_2SiO_4系スピネルの分解境界線の決定とMgSiO_3-FeSiO_3系ペロブスカイトの熱測定から、ポストスピネル転移の相平衡図を計算した。スピネル→ペロブスカイト+マグネシオウスタイト反応の勾配は-3±IMPa/Kであり、低温ではMg_2SiO_4に富むスピネルはマグネシオウスタイト+スティショバイトに分解する。 2. Mg_3Al_2Si_3O_<12>ガーネットはペロブスカイトとコランダムに分解し、37GPaでペロブス力イトー相になった。Mg_4Si_4O_<12>-Mg_3Al_2Si_3O_<12>系では、ガーネット固溶体が2相共存領域を経て一相のぺロブスカイト固溶体に転移した。そのためペロブスカイトが下部マントルでのAlホスト相である。ガーネット-ペロブスカイト転移は2±1MPa/Kの勾配を持ち、マントル対流を促進する。Fe_3Al_2Si_3O_<12>ガーネットは約21GPaで三相の成分酸化物に分解した 3. CaAl_2O_4-MgAl_2O_4系にMgに富む新しい六方晶系高圧相を見出し、その構造を決定した。従来、天然ガーネットやMORBの高圧実験で見出されていた未知のAl含有相はこの相と同一構造を持つと判断された。 4. CaTiO_3-CaSiO_3,系では15GPa以上で、全組成範囲でペロブスカイト連続固溶体が安定になり、CaSiO_366%まで含むペロブスカイト固溶体が常圧に回収できた。この固溶体の熱測定から、CaSiO_3ペロブスカイトの転移エンタルピーを見積もり、CaMgSi_2O_6輝石の分解境界線を決定した。 5. 珪酸塩メルトと鉱物間の元素分配に関しては、全元素が十分に化学平衡に達するには1時間程度の保持時間が必要であった。オリビンとマグネシオウスタイトでは半径65pm付近のイオンの分配係数が極大となった。ガーネットでは40〜90pmのイオンはほぼ近い分配係数を示したが、90pmを越えると急激に減少した。CaSiO_3,ペロブスカイトでは50pm及び100pm付近に分配係数の極大が現れ、その中間では極小であった。
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