研究概要 |
海洋炭酸系の観測は、西部北太平洋の155°Eに沿って年間1回、北海道の噴火湾でほぼ毎月1回行った。また、ラドン、酸素、フロンなどを用いる大気海洋間の気体の交換速度の観測も行った。得られた成果については、現在解析中であるが、これまでに得られた成果とあわせて、以下のような仮説の検証を行った。 仮説は、海洋水はモデラ-達が考えている以上にCO_2を(産業革命以前に比べて年間3ギガトン程度増加)吸収しているが、最近急速にその吸収量を減らしている、というものである。これの検証に第1歩として、大西洋深層水に比べて太平洋深層水が特にCO_2を吸収しやすいことをPotential Sink Capacity,Θを定義して説明した。これは、南極海での気体交換の効果、炭酸塩溶解の効果、大気CO_2増加の効果よりなり、これらを合計すると、15Svといわれる南極海より北上する深層水は年間1.0ギガトンのCO_2を余分に吸収しうることを、これまでのデータをもとに算出した。この効果は、これまでのもでる計算において殆ど考慮されていないので、これを算入し、これまで計算されてきた表層水や中層水への吸収量を加えれば、上記の仮説の前半は証明されるものと考えられる。なお、北太平洋には、実際に上記の吸収を行う4つの過程が存在することを見つけ、それの定量化を試みている。それらは、北太平洋中層水および南極中層水、大陸棚ポンプ、荒天化の高緯度域、けい藻を主体とする北部北太平洋の生態系である。
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