1.分子内電子移動と溶媒和構造 分子内電子移動を示す典型的な分子であるパラニトロアニリン(以下pNAと略す)がアセトニトリル(同以下AN)と四塩化炭素(同以下CCl_4)の混合溶媒中で、pNA:AN=1:1およびpNA:AN=1:2の会合体を作ることを見い出した。ラマン分光法により1:1会合体では、ANがpNAのアミノ基につき、1:2会合体では、2つめのANがpNAのニトロ基につくことがわかった。最初の会合により、pNA分子の分子内電子移動が促進され、それによりニトロ基との第2の会合が可能になるものと考えられる。 2.強電場下の分子の電子的応答 強電場下の分子の電子的応答挙動を調べる目的で、パルス電圧印加赤外分光装置を開発した。 現在、pNA分子のAN溶液中での電場応答挙動を調べるための実験を行っている。 3.溶媒和構造の解離および再結合ダイナミクス フェムト秒時間分解分光により、AN中のpNA分子を光励起した後の、溶媒和構造の解離および再結合のダイナミクスを調べた。1:2会合体を選択的に励起すると、光励起直後に会合体の解離がおこり、フリーなpNA分子が生成し、それが1ピコ秒以内にもとの1:2会合体に戻ることがわかった。
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