研究概要 |
初年度としては、表面における電子励起状態の観測行うためのフェムト秒時間分解分光システムの作製を行った。今回作製したシステムでは、ポンプパルスとしては波長にして200nm、266nm、及び400〜750nmまでの領域のフェムト秒パルスが発生可能であり、また、プローブパルスとしては320〜1000nmまでの可視〜近赤外域をカバーした白色光パルス及び赤外域としては3μmまでのフェムト秒赤外パルスを用いることができる。 さらに、作製したシステムにより、白色光パルスをプローブとして用いたポンプープローブ法により酸化カドミウム(CdO)薄膜のホットキャリアー及びバンド構造の変化の実時間追跡を行った。その結果、CdO薄膜では生成されたホットキャリアーはまず0.4〜1psの寿命でCdOのコンダクションバンドの底まで緩和し、その後、数10psの寿命をもってバレンスバンドへと緩和していく様子をとらえることができた。また、ホットキャリアーが存在している期間内(0.4〜1ps)ではバレンスバンドが安定化し、CdO薄膜の吸収端がレッドシフトすることを見出した。 また、表面吸着種の励起プロセスを観測することを目的として、Ni(111)表面上に吸着したCO分子の紫外パルス(波長:266m)に対する応答を時間分解表面和周波発生法により観測した。その結果、紫外パルスによって生成したNi中のホットエレクトロンが吸着COにより生じた表面電子状態により共鳴的に散乱されることにより、CO分子はCO負イオン状態を経由して振動励起されることをピコ秒パルスを用いた実験で明らかにした。 今後は作製したフェムト秒システムと表面非線形分光法(SFG,SHG)を組み合わせることにより、表面における電子励起が関与した過程をより詳細に検討していく予定である。
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