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1998 年度 実績報告書

水中のプロトン移動のダイナミックスと水の揺らぎが化学反応へ及ぼす影響の理論的研究

研究課題

研究課題/領域番号 08404040
研究機関名古屋大学

研究代表者

大峰 巌  名古屋大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60146719)

研究分担者 松本 正和  名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 助手 (10283459)
斉藤 真司  名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (70262847)
キーワードプロトン移動 / 水の揺ぎ / 氷の中のプロトン移動 / 化学反応 / 超臨界水 / 分子論的機構 / ラジカル / イオン
研究概要

我々は液体の水また氷の中のプロトン移動の分子論的機構の解明、また超臨界水の反応性の起源について研究を行い、次のようなことを明らかにした。
水中ではH_3O^+は3配位を好み、プロトンが3配位の水分子へ選択的に移動する。また、プロトンが移動する際、水分子のO-O間距離が短くなり、プロトンは最近接の2つの水分子と(H_5O_2^+)構造を形成しており、プロトン移動は、これらの水分子間の往復運動である。氷では、液体の水での結果と異なり、プロトンが結合距離から4配位の水分子へ付着している。配位する4つの水分子のうち1つの水分子との結合は非常に不安定であり、エネルギー的に配位を形成していない。プロトンの移動に伴い、不安定な結合をする4配位目の水分子との距離、相互作用エネルギーが大きく変化しており、この水分子が氷のプロトン移動の機構に大きく関わっている。
水のpHと超臨界水の非常に高い反応性について、水和の機構との関係を調べるために、電子状態理論および溶液論を組み合わせ、水の中で水分子が解離するときのポテンシャルエネルギー曲線を求めた。真空中で水分子が解離するときのポテンシャルエネルギー曲線では、ラジカル解離(radical channel)がイオンで解離する(ion channel)よりも安定である。水の中ではion channelの方がradical channelよりも安定となり、これは実際に水は一般条件下でpH=7になっておーりion channelが安定であることと一致している。
超臨界水の条件下では、ion channelは水和によって更に安定化する。これは、溶媒(水)が希薄のため、超臨界水では水和によるイオンの安定化は小さいが溶媒間の構造を壊す不安定化も小さいためである。したがって超臨界水自身では、一般の水と同じようにion channelの方が安定であり、少し酸性に傾いている。さらに有機分子の周りの水和の様子、そこにおける水分子の解離の状態を調べ、超臨界水の高い反応性の分子機構(特にradical channelの役割)を明らかにしつつある。

  • 研究成果

    (5件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (5件)

  • [文献書誌] 斉藤真司: "Off-Resonant Fifth Order Nonlinear Response of Water and CS_2" Journal of Chemical Physics. 108. 240-251 (1998)

  • [文献書誌] 馬場 昭典: "Global potential energy surfaces of water clusters;Reaction coordinate and annealing analyses," Journal of Molecular Simulation. 77. 95-103 (1998)

  • [文献書誌] 松本 正和: "Hydrogen Bond Rearrangement,Phase Space Dynamics and Proton Transfer" The Physics of Complex Lignid World Scientfic. 324-338 (1998)

  • [文献書誌] 大峰 巌: "Fluctuation,Relaxation and Chemical Reaction in Hydrogen Bond Network Rearrangement" Accounts of Chemical Research. (印刷中). (1999)

  • [文献書誌] 斉藤真司: "Water Dynamics;Fluctuation,Relaxation and Chemical Reactions" Advances in Classical Trajectory. (印刷中). (1999)

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公開日: 1999-12-11   更新日: 2016-04-21  

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