研究概要 |
この科研費を用いて得られた主な研究成果を以下に述べる。(1)高温炉レーザー実験装置の中でグラファイトロッドをレーザー蒸発してフラーレン類を生成する際に、照射直後に炭素微粒子から発生する強い発光像を、高速ビデオカメラ(時間分解能25マイクロ秒)を用いて、照射直後の時間の関数として測定したところ、フラーレン類が生成しやすい生成条件のもとでは、発光の見掛けの寿命が長くなっていることを見出した。同じ測定を干渉フィルターを通して行うことにより、予備的ではあるが発光スペクトルの波長分布を求める事ができた。その結果、レーザー照射直後の極めて短い時間ではC_2発光が極めて強く観測されること、時間が経過するにつれてその発光スペクトルは黒体輻射的なスペクトルとなり、そこから炭素微粒子の内部温度を見積もる事ができることが分かった。またフラーレン類が生成しやすい条件のもとでは、炭素微粒子の内部温度の下がり方が他の場合に比べて遅くなっていることが見出された。(2)REMPED分光法を用いて、奇数の炭素クラスター負イオン(C_n^-、n=7,9,11)の電子励起状態ついての知見を得た。(3)金属内包フラーレン類の生成過程について、高温炉レーザー実験を用いて生成条件を変えた実験を行い、ロッド中に含まれる金属原子の原子数比や電気炉の温度が金属内包フラーレン類の生成に大きく影響を与えることを見出した。(4)レーザー蒸発法と光電子分光法を組み合わせた実験により、レーザー蒸発の実験条件を変化させることによって得られる光電子スペクトルの形状が異なる理由が、レーザー蒸発法によって生成される炭素クラスター負イオンの構造異性体(直鎖状及び環状構造)の存在比の変化によって説明できる事を示した。
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