研究概要 |
今年度は、光学活性二点配位型チタン系ルイス酸触媒の創製、及びそれらの反応性、エナンチオ選択性を明らかにした。本研究の初年度から「二点配位型ルイス酸の化学」に取り組み、既に1,8-ビフェニレンジオール由来のアルミニウム触媒や1,8-ジヒドロキシアントラキノン由来のチタン触媒が二点配位型ルイス酸としてカルボニル基やエーテル酸素の二重活性化に有効であることを見い出している。これらの知見を踏まえて二点配位型の光学活性遷移金属触媒、特に光学活性チタン触媒の設計と実用的不斉合成への応用に取り組んだ。二点配位型の光学活性チタン触媒の設計にあたり、光学活性源として安価かつ入手容易な光学活性ビナフトールを用いることとした。これを適当なスペーサーと組み合わせ、得られた光学活性チタン触媒のカルボニル化合物に対する反応性、選択性の評価には、不斉アリル化反応を採用した。種々検討した結果、1,8-ビフェニレンジオール由来あるいは1,8-ジヒドロキシアントラキノン由来の光学活性チタン触媒ではそれほど高い光学収率は得られなかった。こういった光学活性チタン触媒では、ふたつのチタン金属はスペーサーの酸素原子と完全に結合しているが、さらに金属,触媒の柔軟性を持たせるためチタン金属をジアミン型スペーサーに弱く配位させた、新しいタイプの二点配位型光学活性チタン触媒の可能性についても検討し、金属触媒を設計するうえで幾つかの貴重な知見を得ることに成功した。また、二点配位型の有機アルミニウム人工酵素の創製に関しても、新たに二点配位型Meerwein-Ponndorf-Verley還元触媒を案出し、カルボニル化合物の触媒的還元反応プロセス開発への応用に成功した。
|