研究概要 |
水相中の油滴にあるいは液相中の高分子粒子などの微粒子界面を通した化学現象の解明は,分析化学の基礎としての液一液抽出やクロマトグラフィーの微視的な機構を理解するうえで極めて重要である。しかしながら,これまで,微粒子のブラウン運動を制止させ,かつその一粒を選び出す方法が知られていなかったため,単一微粒子に基づいた研究は皆無であった。そこで,本研究では,レーザー捕捉・顕微マイクロ分析法を展開することにより,液一液抽出やクロマトグラフィーの基礎となる微粒子界面での様々な分析化学反応やマイクロキャピラリー/液体界面における物質の相互作用など,そのダイナミクスも含めて詳細に研究した。 研究は初年度においては,単一微小油滴/水界面における,1)物質移動過程,2)電子移動過程,3)イオン交換樹脂界面及びその内部におけるイオン交換過程,更には,4)マイクロキャピラリー/溶液界面における物質の相互作用を通した物質分離の,4つの課題を中心に研究を進めた。1), 2)については直径5μm以下の微小な油滴における電子移動,物質移動速度の特異的なサイズ依存性が確認するとともに,この原因を詳細に検討した。3)については共焦点型レーザ顕微鏡,顕微吸収・蛍光法を利用して単一樹脂毎のイオン交換過程の単一樹脂毎の直接測定に成功した。また,4)については溶液フロー型レーザ捕捉・顕微分光システムを試作するとともに,これを用いたマイクロキャピラリー/チャンネル内の物質分離へ応用した。このような研究を通して,今までにはない視点に立脚して液一液抽出,クロマトグラフィー,キャピラリーに関連する分析化学反応の基礎とその微視的機構を検証しつつある。
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