研究概要 |
1.ディファレンシャルcDNAディスプレイにならびに定量的RT-PCR法によって,若齢菌細胞においてのみ積極的に発現されている遺伝子の1つとして,共生体のリボフラビン・シンターゼ遺伝子が検出された.この結果に基づいて,さまざまな実験を行った結果,宿主アブラムシの必要とするリボフラビン(ビタミンB2)は全面的に共生体によって供給されている事実が明らかとなった. 2.パルスフィールド電気泳動法によって直接的に測定した結果,アブラムシ共生体のゲノムサイズは655Kbpであり,近縁の細菌である大腸菌のそれの約1/7であることを突きとめた.また,共生体にはロイシンの合成系の遺伝子を保有するプラスミドの存在することも明らかとなった. 3.アブラムシ共生体が選択的に合成しているGroELホモログ,シンビオニンの構造と機能については,遺伝子組換えによる数種類の改変型ならびに異種昆虫に存在する変異型シンビオニンを用いて調べた.その結果,自己リン酸化とリン酸基転移反応とでは,リン酸化を受けるシンビオニンのアミノ酸残基が異なることが示唆された. 4.節足動物のリケッチア様細胞内共生体ボルバキアの宿主の生殖機構への干渉現象をタイワンエンマコウロギを材料として調べた.その結果,ボルバキアはこの昆虫に対して一方向性細胞質不和合をもたらすことが判った.また,ボルバキア感染雄の精子においては,ある種の塩基性タンパク質の等電点が大きく酸性側へシフトしていることが示された.
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