研究分担者 |
稲岡 司 熊本大学, 医学部, 講師 (60176386)
中澤 港 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (40251227)
本郷 哲郎 山梨県環境科学研究所, 主幹研究員 (90199563)
石田 貴文 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (20184533)
徳永 勝士 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40163977)
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研究概要 |
本研究は,パプアニューギニアに居住するギデラ族とバロパ族について,長期間のフィールドワークと生体試料・環境試料の分析によって,ヒト個体群の適応という観点から包括的な比較検討を行ったものである。具体的に実施した内容は,以下の3項目にまとめられる。 1.個人レベルの疾患特性の把握 ギデラ族とバロパ族の成人全体の約7〜8割から得た血液サンプルの分析に基づき,個人レベルの疾患特性の比較を行った結果,ギデラ族はかなり伝統的な生活を残している集団であり,疾患についてもマラリアなどの感染症が大部分であって,いわゆる生活習慣病の有病率は低く,疾病罹患の個人差は,遺伝的素因とランダムな環境曝露によってあらかた説明されるといってよいことがわかった。それに対して,バロパ族はかなり近代化が進行した集団であり,糖尿痛などの生活習慣病が増加しているばかりでなく,C型肝炎のような外来の疾患も増加していることがわかった。 2.疾患特性と遺伝特性あるいは栄養状態との関連 遺伝特性としては,さまざまな疾患と関連するHLA-DRB多型と,マラリア抵抗性が示唆されている卵型赤血球症を引き起こすバンド3遺伝子の欠失型変異を調べた。どちらの結果も,過去における遺伝子流入と,それが定着するためのマラリアの淘汰圧を示唆するものであった。栄養状態については,食物摂取パタンの違いによる鉄栄養状態の違いが,マラリア感染率の異なる村落間では貧血の発生に異なる影響を与えることが明らかとなった。 3.包括的な人口動態のシミュレーション C言語の構造体として遺伝情報,血縁関係,栄養状態などの情報をもつ「個人」を定義し,栄養状態と遺伝因子とマラリアへの曝露によって変動する年齢別死亡と,ぺア形成を考慮した出生力に従って人口再生産のシミュレーションを行った。遺伝子の伝達自体は,各ぺアに起こる一回の出生については両親から等確率に起こるものとした。結果の解析はまだ不十分であるが,栄養状態とマラリアへの曝露の死亡への影響が大きい場合に,遺伝的多型性の分散が大きくなる傾向が示唆された。
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