研究概要 |
概要 大きな磁気抵抗比を得るには強磁性体/絶縁体/強磁性体のトンネル接合に於いて,両電極としての強磁性体の組み合わせが重要である。そこで,絶縁体として約25ÅのAlを自然酸化させたもので固定し,強磁性体として1000ÅのFe,Co,Fe-Co合金の種々の組み合わせた接合について,トンネル磁気抵抗(TMR)比と強磁性体の分極率の関係を調べた.その結果,分極率の大きい磁性体を用いることによりTMR比が大きくなり,これまで理論的に示されている傾向を示した.しかしながら,同じ磁性体を用いた接合でもTMR比がばらついた.TMR比のバラツキの原因として,酸化アルミの障壁の高さが影響していると考えられるため,Fe/酸化アルミ/Feの接合に於いて,アルミの酸化条件を変えることにより,障壁の高さを変化させ,TMR比に及ぼす影響を調べた.その結果,障壁の高さが0.5〜1eVでTMR比が小さくなり,それよりも小さいか大きいとTMR比が大きくなることが明らかとなった.この実験は現在も引き続き行われており,理論的結果と対比させながら考察している.また,いずれの組み合わせの接合に於いてもTMR比は印加電圧の増加に伴って著しく減少することが明らかとなった.その他,絶縁層の評価に関して(1)フーリエ反感赤外分光による酸化状態の解析,(2)酸化の状態を更に詳しく調べるための非弾性トンネル分光装置の開発を行った.また,将来の微細加工プロセス化を考慮し,Alの自然酸化法に加えてプラズマ酸化による実験を開始した. 今後,デバイス化して研究を発展するためには,(1)トンネル抵抗及びTMR比のバラツキを極力小さくするためのトンネル障壁の生成技術の確立,(2)印加電圧の増加に伴うTMR比の減少の原因の究明,(3)メモリー,センサとしての応用を考えた場合のミクロンサイズの接合生成プロセスの確立と,ミクロンサイズでのトンネル抵抗及びTMR曲線の形状の制御が重要となるので,これらについて研究していく.
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