研究概要 |
821780 スピントンネル磁気抵抗効果をデバイス化するために必要な微小トンネル素子作製プロセスの検討を行った.以下に主な検討項目と成果を記す. 1. 微細加工プロセスの検討 (1) フォトリソグラフィー及びArイオンミリングを用いて微小トンネル接合を作製した.接合面積を規定するプロセスでArイオンミリングを用いたが,磁性金属の再付着により接合の磁性電極間が電気的に短絡(ショート)し,接合の電気的磁気的特性が非常に劣化することが従来の報告者らの研究で明らかになっていた.そこで,Arイオンミリングプロセスの最適化を行う実験を行った.その結果エッチング角度,深さを最適化することにより,この点を改善することができた. (2) リード電極間の電気的絶縁にはスパッタSiO_2膜を用いた.接合面積が10^2μm^2が以下になると,SiO_2膜にコンタクトホールを作製することが非常に困難になる.そこでコンタクトホール作製プロセスの最適化の実験を行い,CFガスを用いたプラズマエッチング法が適していることが明らかとなった. (3) 上記の作製プロセス,条件を用いて微小トンネル接合の作製を行い,微細加工プロセスの接合特性に与える影響を検討した.具体的にはメタルマスク法で作製した接合面積10^4〜2.5x10^5μm^2の試料を微細加工プロセスを用いて穢小接合に加工し,微細加工の前後で接合の電気的磁気的特性を比較した.その結果,最小9μm^2の接合で加工前の特性とほぼ同じ特性を得ることができた.さらに,抵抗値,MR比のばらつきが加工前に比べ減少することを示した. 2. 極薄アルミナ絶縁層の作製条件の検討 トンネルスピン磁気抵抗効果を再生磁気ヘッドデバイスに応用する場合,ノイズ特性の点から接合の抵抗値の低減が大きな課題である.そのためには磁性層に挟まれた極薄アルミナ絶縁層の作製方法,条件の最適化が必須である.そこで,試料を大気中に取出さずIn-situでプラズマ酸化する方法を採用し,アルミ膜厚および酸化時間を種々変化させて実験を行った.その結果,プラズマ酸化時間:60秒,アルミ膜厚:0.7nmの条件で抵抗値4x10^3Ωμm^2,MR比15%を示す接合が得られた.即ち,従来の結果に比べ3桁の抵抗値の低減を図ることかできた.
|