研究概要 |
金属-絶縁体転移、磁気相転移、電荷整列転移、超伝導転移、中性イオン性転移、垂直磁化や巨大磁気抵抗などを利用した機能性材料の開発と利用が進められている。登場してくる物質の多くは単位格子も大きく,多元素かつ不安定物質の例も多く,断片的な測定のよせ集めだけではもはや電子状態を総合的に理解するのは不可能となってきている。本研究の目的は相転移とそれに伴う電子状態の変化を、高いエネルギー分解能の光電子分光、逆光電子分光ならびに光分光の諸手法を組み合わせて研究し、基礎的な物性情報を積み上げた上で他の実験や理論研究と互いにフィードバックしあいながら明らかにする事であるなかでも物質の性質を大きく支配するのは結合に深く関与しているフェルミレベル付近の電子状態でありこれらを高いエネルギー分解能で知る事が何よりも重要である。 本年は近藤絶縁体YbB_<12>,少数キャリアheavyフェルミオン物質Yb_4As_3,マンガナイト系物質Nd_<0.5>Sr_<0.5>MnO_3などについて高分解能光電子分光および逆光電子分光を行った。室温から30Kの低温まで30meV以上の分解能での測定を行った。その結果YbB_<12>についてはBのpバンドにギャップが生じること、Yb4f近藤共鳴が観測されることがわかった。Yb_4As_3については電荷整列に伴い4fバンドスペクトルが大きく温度変化すること、相転移温度以下でも4fスペクトルのnarrowingが起こっていることを明らかにした。また電荷整列(金属-絶縁体転移を伴う)や強磁性転移に伴うNd_<0.5>Sr_<0.5>MnO_3の電子状態変化をMn2p共鳴光電子分光およびスペクトルの温度変化より明らかにした。これらの結果はPhys.Rev.Lett.ほか国際会議等で報告した。
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