1)新しい静電気力の高分解能測定法の提案 力を検出するてこ(シリコン製の導電性てこ)に電圧を印加すること事により、非接触モード超高真空原子間力顕微鏡(UHV-AFM)を静電気力顕微鏡(EFM)としても動作させることができる。本研究では、表面凸凹と静電気力を同時に高分解能測定する方法を新たに考案した。具体的には、表面凸凹は、探針と表面との間の接触電位差を打ち消すように、導電性の探針にバイアス電圧を印加し、静電気力の影響を最小限に減らして測定する。他方、静電気力は、凸凹測定時のバイアス電圧とは異なる電圧を探針と表面間に印加し、その結果生じる力の変化分を捉えて測定する。 2)GaAs(110)表面での原子分解能静電気力測定の実現 1)の方法を用いて、Siをドープしたn型のGaAs(110)表面の凸凹を静電気力を同時測定した。その結果、表面の凸凹像には、表面の格子だけでなく、点欠陥も明瞭に示されていた。他方、表面の静電気力像には、点欠陥の位置で暗いコントラストの欠陥(A)と明るいコントラストの欠陥(B)があることが分かった。探針に印加する電圧の極生を反転させると、Bの欠陥だけが明暗反転することが判明した。この結果は、GaAs(110)表面には帯電している欠陥と帯電していない中性の欠陥の2種類あることを示している。また、静電気力像の断面図より空間分解能を見積もると0.4nmとなり、静電気力測定で原子レベルの空間分解能を実現できたことが判明した。
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