研究概要 |
本研究では,微細加工した磁性薄膜におけるスピン系のふるまいと膜構造の関係を明らかにするとともに,これを超高密度ストレージへ応用することを目標としている。本年度は,スパッタ法や分子線エピタキシ-法で超薄膜を作製し,ソフト磁性,スピン依存電気伝導,磁気光学効果等の観点から,超薄膜の特性評価を行なった.以下に,本年度に得られたおもな結果をまとめる. 1)巨大磁気抵抗効果をスピンバルブ膜として磁気ヘッドへ応用することを考え,強磁性層の磁化方向をピン止めするための反強磁性層の成膜方法および反強磁性層と強磁性層の交換結合について詳細な検討を行った。反強磁性層としてはまず、NiO膜を選び,スパッタ法によりガラス基板上にNiO/FeCoNiおよびFeCoNi/NiO層の順で成膜を行い,交換結合磁界の成膜条件依存性を調べた。FeCoNi上に直流磁界中でNiO膜を成膜した場合には,成膜後の熱処理なしで交換結合磁界が現われることが分かった。また,NiO層としては30nm程度の膜厚が必要であることも分かった。 2)MBE法によってMgO基板上に反強磁性膜のMnPt膜のエピタキシ-成長を試みた。XRDの解析結果からMnPt規則相の生成が確認できたため,成膜後に真空容器から試料を取りだし,マグネトロンスパッタ装置によってMnPt層上にNiFe膜を形成した。磁界中でNiFe層を成膜したが,交換結合磁界は現われなかったため,試料をさらに,真空中で,700℃までの温度で磁界中において熱処理を行った。その結果,550℃で30秒,熱処理を行うことによって約250eの交換結合磁界が得られた。この値は,応用を考える場合,不十分なものであるため,現在,MBE装置を改造し,MBE成膜室内でNiFe層とMnPt層を連続して成膜できるよう準備を進めている。
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