研究概要 |
本研究では,微細加工した磁性薄膜におけるスピン系のふるまいと膜構造の関係を明らかにするとともに,これを超高密度ストレージへ応用することを目標としている。本年度は,スパッタ法や分子線エピタキシー法で超薄膜を作製し,ソフト磁性,スピン依存電気伝導,磁気光学効果等の観点から,超薄膜の特性評価を行なった.また,FIBによる薄膜の微細加工も行なった。以下に,本年度に得られたおもな結果をまとめる. 1) MBE法によってSrTiO3基板上に強磁性層と反強磁性層の交換結合膜のエピタキシー成長を試みた。SrTiO3を基板に用いたのは,NiFe層との格子定数のミスマッチが小さいためである。SrTiO3(001)上のNiFe層は,(001)面がエピタキシャル成長した。この上に室温から300℃でMnPt層を成長させたが,100℃以下でMnPtの(100)面のエピ成長が観察された。なお,成長中には,膜面内の一方向に100Oeの直流磁界を加えたが,この磁界によって,100℃以下の二層膜では,一方向異方性が観察された。また,MnPt層は,室温成膜においても,AuCu型の規則相となった。200℃以上の成膜では,MnPt層は,多結晶となり,NiFeの磁化ループは,一方向異方性が無くなるとともに,保磁力が500Oe程度まで増大した。 2) Gaイオンをベースとした集束イオンビーム加工装置の立ち上げを行ない,Cu膜において微細加工性能の確認を行なったところ,ビーム幅0.1μmで,サブミクロンの加工が可能であった。これを用いて,NiO/CoFeB/Cu/CoFeBスピンバルブ膜に加工を行ない,幅6μmの細線を作製した。細線のスピンバルブ特性は,加工前の膜の時に比べ,NiO層との交換結合磁界の低下が観察されたが,MR比については,ほぼ変化はなかった。さらに,微細化したときの特性についても検討を継続している。
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