研究概要 |
本研究は通信の分野でシステムの性能評価に用いる「Eb/No-BER特性」を,新たにCMOS-LSI分野に適用できる事に着目し,Eb/No-BER特性に基づき0.1μm1Ggate1GHzクロックの超低消費電力ULSIの開発を目的とする。初年度である平成8年度は,以下の研究をおこなった。 (1)CMOS基本回路のEb/No-BER特性評価:通信の分野でのシステム性能の指標となるEb/No-BER特性をCMOS回路に導入する為,まず1〜2μm設計ルールの基本的なCMOSテスト回路を設計・試作し,インバータについてEb/No-BER特性を測定した。CMOS回路においてもEb/No-BER曲線が理論曲線に従う事を確認した。また,Eb/No-BER特性を用いて,システム側からの要求という観点から電源電圧の下限値を求める方法を新たに提案し,ノイズとして熱雑音環境下のみを仮定した場合,次世代,次々世代ゲート長MOSデバイスにおける最低電源電圧をEb/No-BER特性から算出した。本研究では,システムのEb/No-BER特性という観点からCMOSデバイスの電源電圧の下限をはじめて評価した点が重要な特徴である。 (2)LSIの雑音として熱雑音の他に配線間クロストーク雑音に着目し,クロストーク雑音が存在する回路について,そのBER特性より電源電圧・データレートが決められた時の許容クロストーク雑音の限界値を,配線形状,配線間距離という観点から評価する方法を提案した。実際にクロストーク評価用テスト回路を設計・試作し,Eb/No-BER特性を測定し,クロストーク雑音許容値を算出している。 以上,本研究は計画に沿って親展しており,「Eb/No-BER特性」に基づく超低消費電力ULSIの開発の見通しは立っている。
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