研究概要 |
821783 本研究は通信の分野でシステムの性能評価に用いる「Eb/No-BER特性」を拡張し、新たにCMOS等のシリコンデバイス、及び極微細素子の性能評価に適用する事を目指し、真の超低消費電力デバイス開発の指針を目指した。平成10年度は以下の研究を行なった。 極微細・超低消費電力デバイスとして着目されている、単電子トランジスタ(Single Electron Transistor:SET)素子について、「Eb/No-BER特性」が適用できる事を確認した。この結果をもとに、現在盛んに研究されている、相補型インバータであるCSET(Complementary SET)回路の室温動作可能性について、モンテカルロシミュレーションにより評価した。 この結果、室温で通常動作(ビット誤り率:BER<10-3)させるためには、原子サイズ以下のトンネル接合を作らねばならない事、また、現段階で実際に作製可能な大きさの素子で評価するとビット誤り率;BERがl/2となってしまう事がわかり、結局室温動作CSETは困難との見解を得た。 以上の結果から、スペクトラム拡散通信の受信部で用いられるマッチトフィルタの概念をCSET回路に導入し、S/N改善を利用し室温動作を可能にする、新しいマッチトフィルタ型SET回路を提案した。モンテカルロシミュレーションにより、800チップ用いる事で室温動作が可能である事が分かった以上,本研究は計画に沿って進展しており,「Eb/No-BER特性」に基づく超低消費電力ULSIの開発の見通しは立っている。
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