研究概要 |
構造力学は,主に,設計された構造物の形態を基点に,そこからの変位や応答など,設計された構造物の性質を把握するために用いられている。しかし,最近,工学や理学等の分野で形態に関する研究が盛んに行われ,形態を創生するための力学が芽生えつつある。 本研究では,構造力学の基礎方程式に立脚する形態解析として,(a)不安定構造の形態解析,(b)自己応力と自己応力の導入方法,(c)変位指定の形態解析,(d)地震動の作用する塔状構造物の最適形態解析,を取り上げ,その力学的背景と創生される形態の性質を調査している。 本年度実施した研究を列挙する。(1)ケーブルと剛体構造による複合構造に対して,適合方程式と釣合方程式の理論構成,安定・不安定の判別法,応力・変形解析,振動解析,風応答解析,実験的研究,を行った。(2)遺伝的アルゴリズムを応用し,エルセントロ地震,八戸地震等に対して応答の最小となる最適形態を求める方法を確立した。(3)上下加振の作用する偏平アーチの動的座屈に対する最適形状を求める解析を行い,座屈荷重の形状に対する感度を検討した。(4)変位指定の形態解析(ホモロジー設計)に対して,連続法を応用する手法を試みた。 形態解析には目標が必要である。目標には力学的目標,形状目標,機能目標等があり,創生される形態を持つ構造は指定した目標を満足する。そのため,形態解析を通して得られる形態と経験によって設計される形態の差がどの程度目標の変動を生じるかの検討が必要となる。次年度以降,本研究において,指定した機能を持つ構造の価値を評価する価値工学を確立する予定である。
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