本年度は、以下の項目についてを研究した。 (1)自然と生活空間の形成に関する研究においては、まず古代の・山・野・河・海についてのヴァナキュラーな観念を解明し、それらと、中世以降中国から伝来し、定着した「十境」と「八景」などの自然観・環境観が、中世の京都や博多、奈良、堺などの生活空間を新たな目で見なおす大きな契機となり、さらに和風化した環境概念をつくることになった点を明らかにし、複雑多様な自然観が都市・集落・住居などのありかた規定していることを推定した。 (2)都市・集落・住居の選地と自然に関する研究においては、とくに京都・博多・名古屋・鎌倉・堺・仙台・奈良・金沢など古代から近世にいたる都市について、都市形成の契機と自然の関係、都市の成立と自然環境の維持・改変について実地調査を行い、多数の資料を収集した。個別のちがいは当然大きいにしても、根底に共通する点があるという感触をもつにいたった。 (3)都市と自然に関する参考文献・資料・史料・指図・絵画資料など大量のデータを収集し、必要なものを機械可読化した。それらをパソコン・データベースに入力し、研究支援データベースを構築するための基盤として予備的なデータベースを作成した。
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