研究概要 |
磁化力(χ(β・∇)β/μ_0)の利用に当たっては磁化率χの値に注目する必要がある.本研究で対象とする材料は非磁性の金属であり,χの値は強磁性物質に比較して極めて小さいものの,その値は物質によって大きく異なり(反磁性物質では負値を取る)かつ,結晶方位によっても異なることが知らされている.そこで,本研究では強磁場中におかれた金属試料にレーザー光を照射して試料金属を蒸発させ,基盤に蒸着した微粒子の結晶方位制御を調べ,結晶方位に及ぼす磁場印加の効果を明らかにした.また,電荷を帯びた微粒子の結晶化の過程に及ぼす強結合プラズマの効果を明らかにし,強磁場印加の効果の有意性を予測した. 本実験に先立ち,装置の組立および操作条件の把握のためにボア-内の磁束密度分布の測定,YAGレーザー光の焦点と試料設定の位置の測定を決定した後,基盤位置と試料設定位置,真空度と蒸着挙動について調べた.また,液体金属を用いた品出物の配向に及ぼす強磁場印加の効果と比較検討すると共に理論的考察をした. 具体的には,真空雰囲気中(10^<-2>-10^<-5>torr)で,鉛(χ=-0.157x10^<-6>emu),ビスマス(χ=-1.35×10^<-6>emu),マンガン(χ=11.8x10^<-6>emu)にYAGレーザー光を照射し,蒸発金属を強磁場(B_<max>:5.5T)中におかれたガラス基盤上に蒸着した.その結果,蒸着速度を磁場印加によってコントロールできることを明らかにした.また,得られた試料の表面の顕微鏡観察によりマンガン試料の場合,蒸着した粒子は強磁場中では球状を呈したが,磁場を印加しない場合には扁平となることを見いだした.さらに,結晶形態をX線回折で同定した結果,溶融金属中に晶出した金属間化合物の結晶配向に及ぼす強磁場印加の効果と同様の効果を気相から蒸着・凝集する場合にも亜鉛,ビスマス,マンガンを用いて見いだした. 今後,強結合プラズマと強磁場とをハイブリッドさせた装置の構築を行い新しい材料の創製を試みたい.
|