研究課題/領域番号 |
08405050
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研究機関 | 宇宙科学研究所 |
研究代表者 |
栗林 一彦 宇宙科学研究所, 宇宙輸送研究系, 教授 (70092195)
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研究分担者 |
高村 禪 宇宙科学研究所, 宇宙輸送研究系, 助手 (20290877)
稲富 裕光 宇宙科学研究所, 宇宙基地利用研究センター, 助教授 (50249934)
佐藤 英一 宇宙科学研究所, 宇宙輸送研究系, 助教授 (40178710)
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キーワード | 無容器プロセシング / 酸化物超伝導体 / 包晶反応 / Nd123沿相 / ガス超音波浮遊装置 |
研究概要 |
包晶系状態図を示す酸化物超伝導体を融液の状態から冷却した場合、通常は初晶の晶出が優先し、包晶相の生成は包晶点における三相反応(包晶反応)を経なければならない。もしも融液を包晶点以下に過冷することができれば、そこでは包晶反応を経ることなく過冷融液から包晶相が直接晶出する可能性が生ずる。本研究では、このような過冷却を実現する手段として超音波/ガスジェット浮遊装置に炭酸ガスレーザーを組み込んだ浮遊炉を新たに構成し、上記の可能性の検証を行った。 Nd系酸化物超伝導体であるNdBa2Cu307-Xを試料に用いた実験では、浮遊液滴の934℃までの過冷却と、その後の自発核生成が観察された。凝固組織は典型的なデンドライトであり包晶相(Nd123)の体積分立率は90%以上であった。自発核生成試料と種々の温度で強制的に核生成させた試料のX線回折パターンは包晶点(1084℃)を境に大きく変化し、Nd123の分率は包晶点以下で増大することが明らかとなった。このことは、凝固組織はデンドライトであることと併せて考えると包晶点以下に過冷却されることにより包晶反応を経ることなく液相から直接Nd123は晶出したことを裏付けているといえる。さらにメルト組成を変える(Cu、Baをリッチにする)ことは123相の体積分率を増大させる等、本手法は酸化物超伝導体等の機能性物質の非平衡生成プロセシングに極めて有効であることが明らかとなった。また本手法を他の系(Sm、Y系等)へ適用したところ、Sm系では同様の結果を得たものの、Y系では211相、123相とBaとCuの酸化物が混在した通常の凝固時とほとんど変わらない組織であった。原因としてはメルト中のRE元素の固溶量の違いに加えてBaサイトのRE元素による置換の有無が考えられるが、詳細にはそれぞれの相の凝固速度の過冷度依存性等のさらなる検討が必要である。
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