1.「表面修飾による薄膜成長過程制御」手法のTEOS/O_3系SiO_2-CVDへの応用 本研究では単原子層程度の表面修飾が薄膜成長を制御する有力な手法であることを提案し、実験を通じて明らかにしてきた。本年度は、この手法が実プロセスレベルでも有効であることを示すため、実際の工業用CVD装置を用い、実プロセスの操作条件の範囲内の手順により、表面修飾による成膜特性向上を試みこれに成功した。具体的には、基板表面の化学組成が成膜の不均一を引き起こすと考えられているTEOS/O_3系SiO_2-CVDにおいて、その原因がエトキシ基の存在量に起因することを実験的に明らかにした。さらに、この結果に基づきエトキシ基を供給するために、間欠的にO_3の供給を止めてTEOSのみを供給することにより、成膜の不均一性を解消することに成功した。 2.シリコン表面の単分子層処理法の提案 昨年までの研究により、シリコン表面を単原子酸化処理する手法を確立できた。この単原子層酸化表面に有機官能基を付加することができれば、表面の持つ化学的な反応性を広く変化させることができると思われる。そこで本年度は、単原子層酸化表面を出発点として単分子層を形成する手法の確立を目指した。その結果、液相もしくは気相のトリフルオロエタノールを単原子層酸化表面に作用後、フッ素の増加がXPSにより確認されたことより、処理の進行が示唆された。フッ素の存在量を用いた、トリフルオロトキシ基によるシリコン表面の被覆率は0.3であり、これは酸素端側を固定されたエトキシ基が自由に動けるとしたときに占める面積に対応している。
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