本研究では前年度までの研究により、基板表面がCVD薄膜形成過程をドラスティックに変化させることを明らかにした。本年度はこの知見にもとづき、さまざまな系での薄膜成長過程の制御への展開を試みると共に、薄膜表面の荒れなどの薄膜形状も基板表面により決定されていることを明らかにした。 1. Arプラズマ処理によるAl-CVD膜形態の制御 CVDによりTiNを製膜した後にこれを基板としてAlを製膜すると、まず50から100nmの高さを持つピラーが成長して、その後にこのピラーから横方向の成長が進行して連続膜になることが観察された。このようなピラー形成は半導体素子への応用上必要な、薄くてかつ連続な薄膜作成には好ましくない。ピラーは基板表面上の特異な点、つまり何らかの触媒的な作用を持つ点から成長するものと考えられる。そこでTiN基板をまずArプラズマ処理して、特異な点の除去および基板表面全面での反応性の向上をはかり、その後Alを製膜したところ、Alは製膜初期から連続膜を形成していることが確認された。 2. CVD-SiO2薄膜の表面荒れ現象と製膜速度 前年度の研究により、テトラエトキシシランを原料としたSiO2薄膜作成において製膜速度が基板表面に存在する官能基に大きく依存することを明らかにした。今年度はさらに基板表面での製膜速度の分布がSiO2薄膜作成後の表面荒れをもたらすことを明らかにした。これらの研究より、前年度に提案した表面処理により製膜速度制御手法により、CVD-SiO2薄膜の表面荒れを抑制できることが示唆され、新しい製膜様式制御手段の提案につながるものと期待される。
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