研究概要 |
821786 本研究の目的は,キャピラリー電気泳動(CE)による金属錯体やイムノコンプレックスなどの分子錯体に対する新たな分離機能と検出機能の創発にある.本年度の成果は、 (1)高分子電解質、ポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)をイオン泳動制御試薬として利用するCEシステムを用いて金属-N,N'-bis(2-hydroxybenzyl)ethylenediamine-N,N'-diacetate(HBED)錯体アニオンの高度分離を達成した.各HBED錯体アニオンの泳動時間序列はイオンクロマトグラフィーの保持時間の順序と概ね一致しており,イオン泳動制御パラメータは高分子電解質-分離アニオン間のイオン交換相互作用によることが明らかとなった. (2) 錯体の構造ダイナミックスと電子状態を有限温度条件下で高速計算することが可能な粗視化量子分子動力学計算プログラムを開発した.本プログラムを用いて様々な錯体の電子状態と存在形態に関する計算を行い、その有用性を検証した. (3) フェノール4分子を硫黄原子で環状に架橋した新しい型の配位子、チアカリックスアレーンの架橋硫黄に着目し,そのスルホキシドおよびスルホンへの選択的酸化反応を開発した.得られたスルフィニルカリックスアレーンとスルホニルカリックスアレーンの金属イオンとの銘形成機能をチアカリックスアレーンと比較して調査した.その結果、チアカリックスアレーンは比較的Softな金属イオンと、スルホニル体はHardな金属イオンと,またスルフィニル体は両方の金属イオンと錯形成することが分かった.これらカリックスアレーン類の金属イオン選択性を活用し,新しい型のKD-CE適合性試薬として応用することが期待される.
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