研究概要 |
ひずみゲージに代表される従来より広く用いられていたひずみ計測システムは,繰返し負荷を受ける試験片のひずみ計測には適していない.そこで,本研究では,レーザスペックルを利用し,非接触でひずみを測定することが可能な精密ひずみ計測システムを導入して,繰返し応力-ひずみ線図測定を行っている.PEEKマトリックス複合材料積層板[+30/-30]_<4s>の実験結果として,疲労蓄積ひずみは,繰返しの初期には回数毎のひずみ(ひずみ-回数勾配)が大きいけれども,中期においてはほぼ一定値となり,後期でまた大きくなることが確認された.さらに,静的引張強度の85%,80%,75%を最大応力とした零-引張繰返し荷重による疲労試験では,疲労蓄積ひずみを含む最大ひずみ3.9%程度が疲労寿命となることを見いだした.実験結果を整理して,S-N(最大応力-繰返数)曲線を描き,両対数座標上でほぼ直線で疲労寿命を近似できることを明らかにした.同じ積層構成のエポキシマトリックス積層板についても疲労試験を実施中である.積層数を変化させたときの静的強度,疲労強度を測定するために,ラミナを4層ずつ重ねた[+30_4/-30_4]_s試験片について,実験を行った.PEEKマトリックスの場合,静的強度につては[+30/-30]_<4s>の方が[+30_4/-30_4]_sに比較して2倍程度の強度を示した.疲労試験における両者の最も大きい違いは破損モードである.積層数が多い場合には層間でせん断滑りが大きく生じていることが観察された.これらの測定結果を基にして,疲労現象の計算機シミュレーションを行うために,繰返し応力-ひずみ曲線の定式化,積層数を変化させたときの計算機シミュレーション法の提案,斜交対称積層板の斜交角が変化したときの繰返し応力-ひずみ曲線の定式化を行いつつある.擬似等方性複合材料積層板の引張荷重方向やマトリックスが異なる場合について,疲労試験を行い疲労損傷過程を明らかにした.
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