研究概要 |
斜交対称積層板の基本的力学特性を知るために,マトリックスにPEEK,Epoxy樹脂の2種類を,繊維配向角に15,30,45,60度の4種類を,積層順序に〔+θ/-θ〕_<4s>,〔+θ_4/-θ_4〕_sの2種類を用いた短冊型試験片の静的引張試験を行った.その結果,応力-ひずみ関係は,いずれの配向角においても非線型性を示すこと,および破断モードが繊維配向角,積層順序に強く依存することを明らかにした.また,引張強度,破断ひずみなどの静的引張特性に対する,マトリックス,繊維配向角,および積層順序依存性について系統的,定量的な評価を行った.つぎに,一定荷重振幅繰返し片振り引張の低サイクル疲労試験を実施して,繰返し負荷時における応力-ひずみ曲線の測定,ならびに超音波探傷装置を用いた試験片内部の損傷観察を行った.結果として,繰返し負荷を受ける斜交対称積層板の応力-ひずみ関係は,繰返し数の増加とともにひずみが蓄積するいわゆるメカニカルラチェット現象を示すこと,疲労損傷は主に層間剥離として観察され,その進展の様子は積層順序によって異なり,〔+θ/-θ〕_<4s>が漸増型,〔+θ_4/-θ_4〕_sが急増型であることを明らかにした.また,疲労破壊は,繰返し負荷による蓄積ひずみが,静的引張時の破断ひずみに達したときに生じることを実証した. 繰返し負荷時の応力-ひずみ線図において観察されたメカニカルラチェット現象を数値シミュレーションするために、ラチェットひずみの定式化を行った.また,単調負荷時の応力-ひずみ関係の数式的表現としてRamberg-Osgood則が有効であることを確認し,ラチェット構成式と単調負荷時の応力-ひずみ関係を組み合わせることで,繰返し負荷時の応力-ひずみ曲線の数値シミュレーションを行い,実験結果と比較的よく一致することを示した.
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