研究概要 |
1.キュウリモザイクウイルス黄斑系(CMV-Y)ならびに普通系(CMV-O)に対する干渉効果が不完全であると報告されている軽症系の一分離株(CMV-m2)について血清学的,理化学的性質を調べるとともに,そのRNA2およびRNA3のcDNAクローニングならびに全塩基配列決定を行った.その結果からCMV-m2はCMV subgroup IIに属することが明らかとなった. 2.一次ウイルスとしてCMV各系統を用い,二次ウイルスとしてCMV-Yを用いたタバコにおける干渉効果試験を行った.Subgroup Iに属するCMV-OならびにCMV-m1は同じsubgroupに属するCMV-Yに対して完全な干渉効果を示した.一方,Subgroup IIに属するCMV-m2やCMV-GTを一次ウイルスとして用いた場合,接種間隔によっては不完全な干渉効果が観察された.二次ウイルスの接種源として純化ウイルスと精製ウイルスRNAを用いた比較試験を行ったところ.両者に差は認められなかった. 3.CMVゲノムRNAの3'末端非翻訳領域の一部にsubgroup間で相同性の低い配列が存在することを利用して,この領域に相補的な配列のDIG標識オリゴDNAプローブを合成し,異なるsubgroupに属するCMV分離株に重複感染したタバコから各のウイルスゲノムRNAを区別して検出することを試みた結果,pgレベルのウイルスRNAをsubgroup特異的に検出可能となった. 4.CMV系統間に起こる不完全な干渉効果は一次ウイルスと二次ウイルスのsubgroupが異なる場合に生じると推論された.二次ウイルス接種時の接種葉中の一次ウイルスの蓄積量よりもむしろそれが旺盛に複製している状況にあるか否かが干渉効果の発現に大きな影響を与えると考えられた.
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