研究概要 |
カイコの蛹脳から5種類のタンパク質を単離精製することができた。約10,000頭の蛹脳を有機溶媒で磨砕し、その遠心上清を凍結乾燥後、数種カラム樹脂を用いたHPLCによって、Protein-1(15.5kDa),Protein-2(27kDa),Protein-3(17kDa),Protein-4(30kDa)およびProtein-5(29kDa)を単離した。それぞれのタンパク質はSDS-PAGEによって単一のバンドであった。 Protein-2,Protein-4およびProtein-5は、プロテインシー-クエンサにより、N末端アミノ酸配列が一部解析された。その結果、Protein-2は、ハチミツガからすでに単離されているGallerinタンパク質と58%のホモロジーがあり、Protein-4はカイコの血液タンパク質の一種である低分子lipoprotein 30K Protein precursorのN末端の第18アミノ酸からの配列と完全に同じであり、Protein-5ではカイコの血液タンパク質の一種であるmature 30K lipoprotein とまったく同一のアミノ酸配列であった。さらに、Protein-1はN末端がブロックされており、現在deblocking処理してN末端アミノ酸配列を解析中である。 これらの単離したタンパク質の機能を解析するために、カイコの非休眠卵産生蛹から脳-食道下神経球を摘出し、このin vitro系にタンパク質を添加して培養した後、回収された培養液を非休眠卵産生蛹に注射した。その結果、非休眠卵から休暇卵への変換が一部認められた。さらに、単離タンパク質を直接脳にミクロ注射しても同様の休眠性変換が一部確認された。 以上のことは、カイコ脳における新しい神経情報伝達物質としてのタンパク質の存在を示唆している。
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