研究概要 |
カイコの蛹脳の約5,000個(大造の休眠卵産生型)からmRNAを抽出し,cDNAライブラリーを作成中である.最終的には,休眠卵の環境情報伝達分子と考えられる27kDaの単離した脳タンパク質の遺伝子を同定し,バキュロウイルスシステムで大量発現した上で機能解析に利用する. 一方,蛹脳内のヌクレオチド代謝が母親の胚子期にすでに確立されているかどうかについて,イオン交換カラムを利用したHPLCで各ヌクレオチドについて定量し検討した.その結果,休眠卵の誘導率と高エネルギー型リン酸濃度(特にUTP)の間では密接な関係が確認された.さらに、5齢幼虫の雌脳の各ヌクレオチドについて休眠卵産生型と非休眠卵産生型で比較検討したところ,UTPが前者の脳で高い濃度であった. 以上のことから,カイコの脳の発生分化期における環境情報の受容伝達にヌクレオチド代謝の変換が重要であり,これを制御するのが27kDaタンパク質であり,この胚子から蛹までの一連の系(27kDaのタンパク質→UTPを中心とした高エネルギー型リン酸→休眠ホルモン分泌促進)が休眠の環境情報伝達の分子群として作動している可能性が示唆された.
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