研究概要 |
カイコの胚発生,後発生にわたってアルドラーゼアイソザイムの種類と量を調べ,タンパク質を精製し性質を明らかにした.アルドラーゼアイソザイムは組織特異的な発現をしていること,孵化直前および変態期に著しく変動しアイソザイムの切換えが起ることから,同アイソザイムは糖代謝切替において,これまで鍵酵素として知られているホスホフルクトキナーゼよりも重要な律速酵素としての役割を有するものと結論した.加えて,同アイソザイムcDNAとゲノムクローンを作成しつつある.一方,体液キモトリプシンインヒビターの1つCI-8のcDNAをクローン化し塩基配列とアミノ酸配列を明らかにした.これにより,胚発生・後発生におけるCI成分の変動と組織分布を調べるためのマーカーが確立された.さらに,九大保存の多様な突然変異系のうちで,卵が著しく小さくなる突然変異体「矮小卵(emi)」では,卵黄タンパク質の組成と量は正常と変りないものの,卵の形態形成に重要な役割をもつ濾胞細胞の数が少ないことをつきとめ,emi遺伝子は濾胞細胞による卵サイズの決定に深く関与しているものと結論した.同突然変異は生物における固有サイズ決定機構の解明に資するものと期待される.最後に,単一遺伝子クローンをプローブとしてカイコ染色体における遺伝子の座位を顕微鏡で観察するin situハイブリダイゼーション法とその結果のコンピューターによる画像処理システムを確立した.これを用いて突然変異の特質,カイコとクワコ染色体の進化的関係などについて染色体レベルで解析することができるようになった.
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