研究概要 |
1.遺伝子資源として保存されているカイコの突然変異系統の中に,減数分裂によって染色体数が通常の場合と違った様々な値になる系統があることを確認し,遺伝子マーカーを駆使した交配実験から,この系統では第6と第7染色体の間で常に染色体断片の転移が起こっていることが判明した.このような動きをもつものでは染色体交叉と遺伝子組換えに変化があるものと予想され,染色体の動態を支配する分子メカニスムを調べる好個の実験系となるものと期待される. 2.前回に述べた特異的遺伝子配列をマーカーとする染色体in situ hybridizationにより,ホメオティック突然変異を起す座位に関する新しい知見が得られた.これまで交配実験からこの座位は第2染色体の末端にあると想定されていたが,上記の方法ではhybridizationシグナルが意外にも染色体の中央に観察されたのである.このことから,より正しい遺伝子マップの構築が促進されたことになる. 3.引続いて行っているカイコのアルドラーゼアイソザイムについては,胚子形成後半の時期にS型からF型に切替わることを確認していたが,今回,2種のアイソザイムには基質の1つフルクトース1ーリン酸の利用度に違いがある上,アイソザイムの分布はフルクトース1ーリン酸形成系の活性と相関していることを見出し,糖代謝調節においてアルドラーゼが重要な役割を演じているものと結論した.
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