研究概要 |
1.酵母Candida maltosaが有する8種のP450(ALK1〜8)のうち,n-alkaneによって誘導される主要4つのP450の機能について,遺伝子破壊を行って検討した。1)これら4つの遺伝子全てを破壊した株はn-alkane資化能を失った。この結果,P450がn-alkane資化に必須であることが明らかとなると共に,n-alkaneで生育できない遺伝子破壊株の構築に成功した。この株は,来年度以降のin vivo組換え実験に利用できる。2)さらに,これら4つのうち,いずれか(一つあるいは複数)を破壊した株の生育特性,それらの株に対するプラスミドによる相補性,いずれかのみを大量発現させた株の特長,などについて検討した結果,n-alkaneに水酸基を添加する機能としてはお互いにoverlapしているが,4つのうち1つの基質特異性は明らかに他の3つとは異なることが明らかになった。 2.一方,β-galactosidaseをレポーター遺伝子としてそれぞれのP450遺伝子のプロモーター中のシスエレメントの同定を行った。1)ALK5のn-alkane誘導に関与するシスエレメントとして,約120bpの配列(ARR5)を同定した。2)ALK2のn-alkane,およびペルオキシソーム増殖剤による誘導に関与するシスエレメントとして,CGGを含むリピート配列の関与を明らかにした。 3.さらに,Candida maltosaのin vitro転写系を構築し,n-alkaneによる誘導に関与する細胞内因子の解析を行った。その結果,ARR5結合蛋白質は,常に細胞内(核内)に存在し,主要なものは26-kDaであること,DNAへの結合に亜鉛イオンが重要であること,基本転写因子と会合していることが明らかになった。
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