研究概要 |
我々が既に取得したCandida maltosaからの8種のチトクロームP450遺伝子の基質特異性の解析を引き続き行った。既にALK1,2,3,5については終了したので、ALK7,8の高発現と基質の解析を行った。ALK7,8をC.maltosa由来のGALプロモーターに連結し、ガラクトース培地中でALK7又はALK8のみが高生産されるような条件で培養した。これらの菌体からミクロソーム画分を調製し、常法に従ってP450の量を測定し、更に^<14>C標識の基質(ヘキサデカン、ラウリン酸、パルミチン酸)を用いて代謝能を測定した。その結果配列に高い相同性のあるこれら2種のP450はこれら3種の基質のうちラウリン酸のみを酸化できるという特徴的な基質特異性を示した。即ちALK7とALK8は短鎖脂肪酸の水酸化酵素であることがわかった。これは、これら酵素がアルカンの分解の初発酸化には関与せず、後の反応に働くことを意味する。このことは両酵素のアルカンによる誘導程度が低く、また、これらだけではアルカン生育が不可能であるという事実とよく一致する。なお、同一実験条件でのALK4、ALK6の蓄積量が低く、これらの基質特異性の解析はできなかった。 以上、これまでに解析した6種のP450について、それらの基質特異性と一次構造から作った系統樹との間に興味ある関連性を見出した。即ち、一次構造的にはALK1-ALK2=ALK3-ALK5-ALK7=ALK8と4つのグループにこの順で相同性が高く、一方、基質としてはこの順にアルカンを好み、後になるに従って脂肪酸を好むという傾向がはっきりと見られた。今後基質特異性を決定している領域を絞り込む研究を続ける予定である。
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