研究概要 |
我々は既に,Candida maltosaにおいて宿主・ベクター系,遺伝子破壊系を確立し,n-アルカンの初発酸化に関与する8種類のチトクロームP450遺伝子(P450ALKs)を単離している。C.maltosaにおいては,n-アルカンやその誘導体を単一炭素源として培養した場合,これらのP450ALKsの強い転写誘導がみられる。このことは,細胞内に取り込まれたn-アルカンのような非常に疎水性度の高い物質のシグナルが未知の細胞内因子によって核内の遺伝情報へと伝達されていることを意味する。本年度は,C.maltosaにおいてn-アルカンやその他の疎水性物質によるP450ALKsの転写誘導機構を明らかにし,それを一つのモデルとして真核生物の疎水性物質による応答機構を考察することを目的とした。 ALK2プロモーターの欠失解析によりn-アルカン及びクロフィブレートによる転写誘導にプロモーター上の複数の領域が関与することを示した。またプロモーター上に見られたオレイン酸応答配列の相同配列(GCCモチーフ)に部位指定変異導入したところ,転写誘導活性の有意な低下が認められ,そのモチーフの転写誘導における重要性が示された。 ALK3プロモーター上のn-アルカン及びクロフィブレートによる転写誘導に必須な87bpからなるUAS領域のうち,3コピーのダイレクトリピート構造を含む配列についてゲル移動度シフトアッセイにより配列特異的に結合する因子の存在を示した。また,ALK1プロモーターにおいてn-アルカンによる転写誘導に関与する領域であることが示されている,ARE1,ARE2,ARE3の各エレメントに対しゲル移動度シフトアッセイを行い,これらの配列に特異的に結合する因子の存在を示すと同時に,それらの配列を用いた競合実験から各配列に結合している因子がそれぞれの配列に特異的な別種の蛋白質によるものであることを示唆した。 この他,Yarrowia lipolyticaのP450ALKsの単離構造解析なども行い,3年間の成果を取りまとめた。
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