研究概要 |
ゴミコナダニの1種の性フェロモンとしてローズフランを単離同定した。ローズフランは多くコナダニに広く分泌成分として見つかる揮発性の高い化合物であるが,その機能が初めて明らかになった。この種を含めて,ゴミコナダニ4種でそれらの性フェロモンを同定できたが,これらの性フェロモンは雌雄両方に存在し,雄だけが感知して配偶行動を起す。しかし雌雄間の存在量やオスが相手をメスと認知する能力を調べると一定の傾向が認められ,分泌腺の1成分が性フエ口モンとして発達してきた進化の過程を示唆していると考えた。そこでミトコンドリア・シトクローム酸化酵素サブユニット1の遺伝子断片を取りだすことに成功した3種をもちいて,その分子系統樹を作成した。その結果,性フェロモンの発達過程が理解でき,ゴミコナダニ類での性フェロモンの進化過程の一証拠を提出できた。またゴミコナダニの1種Caloglyphus rodrigueziの配偶行動を精密に解析した。さらに現在アシナガゴミダニ属及びミズコナダニ属の性フェロモンを同定でき,口頭発表を予定している。 カブラハバチの幼虫は十字花植物の害虫である。成虫はなぜかクサギの葉上に集まり葉面を舐める。クサギの成分クレロデンドリン類を摂取し一部代謝して,性フェロモン及び防御物質として使っている。クサギの成分を調べ新規成分を単離した。その構造を解明しアジュガタカシンA及びBと命名した。またコクサギに含まれるアゲハチョウの摂食忌避物質を単離し,同定に成功した。パパイヤ・ミバエの化学生態学及び鱗翅目昆虫の特異化合物についての研究成果があった。 なお,主としてダニの観察のために実態顕微鏡を,また研究結果の整理と発表用の資料を作製するためにパソコンを,それぞれ購入して本研究を展開した。
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