本研究ではバイオマス特にセルロースアセテート(CA)の新しい可塑化法、及びバイオマスの液化とその三次元硬化性細脂への変換に関して検討した。前者について、まず二塩基酸無水物とモノエポキシドをCA共存下、70℃〜180℃で20〜25分間混練反応することによるCAの可塑化を検討した。その結果、CAの残存水酸基と二塩基酸無水物のオリゴエステル化反応によるグラフトと、CAが関与しないオリゴエステル化物、すなわちホモオリゴマーによるCAの可塑化が効果的に発現することが知られた。この場合低分子量可塑剤を用いて可塑化するとき起こりがちなブリーディングが起こりえた。これはグラフト量を多くすることで抑制できることが知られ、グラフト効率を大きくする手法の開発を試み、ブリーディングの抑制をなしうる反応条件を求めた。同じ目的で乳酸、グリコール酸といったヒドロキシ酸のCA共存下での重縮合反応を検討し、同様の結果を得たが、反応時間が長いという欠点があった。次にこれらの試みで共通した問題点である高グラフト効率化が、スズ系触媒を用いる環状エステルの開環グラフト重合により解決しうることが明らかになり、関連の反応条件が検討されると共に、より優れた加工性と成形物物性を与えうる反応法が追求され、望ましい結果を得ることができた。他方、液化と熱硬化性樹脂化についても、より実際的な液化法である酸触媒液化法を含め液化機構の解明を分子オーダーで進めることができ、液化物の安全性についての知見を得た。また液化物の熱硬化反応性を測定し、それを液化条件と結びつけると共に、より高い反応性を持った液化物からの成形物の高物性化についても検討した。他に、官能基含量の少ない「米ぬかピッチ」への官能基導入とそれらをポリオール成分とするポリウレタン発泡体の調製についても検討を進め良好な結果を得た。なお、多くの反応生成物で生分解性の向上を確認した。
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