研究課題
本年度は新食糧法施行後の産地における取り組み、特に生産者と系統農協の取り組みについて、特徴的な動きを見せている事例に関して、協力者の参加も得て以下のように予備的調査を行なった。(1)低質米地帯の産地動向調査。北海道における農協共販及び米卸売業の実態を調査した。その結果、北海道でのホクレンを中心とした広域産地形成の試みは、基本的には低食味米としての道産米の市場特性に基づいているのだが、自主流通米の殆どの銘柄が同じ価格帯に収斂しつつある現在、大手卸や量販店との対応である程度ロットで競争力を維持しようとするとき、農協販売戦略の1つであることが明かとなった。(2)米産地の再編のひとつの典型と目される福岡県の事例調査。同県では「売れ筋」であるはずのコシヒカリの作付過剰による価格低迷に対して、県内にターゲット市場を絞った「県民米」の新品種の開発とコシヒカリからの品種切り替えを官民共同で積極的に行った。これは、産地にとっての個別の需要を開発段階にさかのぼって生産過程へフィードバックする産地再編の始まりを示す好例といえる。(3)日本有数の早場米産地であり首都東京等の大消費地に近接している千葉県の調査。本県では旧食管法時代には茨城県南地帯とともにいわゆる自由米地帯として知られていた。新食糧法下では、さらに多数の商人系「出荷業者」が農協系統と米の集荷実績を巡って激しい競争を展開していた。大規模生産者の販売先は概ね農協系統3割、商人系3割、自力販売3割という状況であり、また生産調整への参加率も大規模生産者において低いこと等が明らかになった。(4)中国東北地方(黒竜江、吉林、遼寧)の産地調査。生産者、試験研究機関の調査を行なったが、国内では有数の良質米産地でありながら、輸出余力は乏しく、自給体制の強化に努めている。今後は、今年度と次年度に予定されている他地域(東北、アメリカ)等の動向調査に基づいて、米穀卸・スーパー等流通についての調査を行なう必要がある。
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