研究課題
基盤研究(A)
ウイルスの病原性発現機構を宿主側の要因を詳細に解析することによって究明することを目的とした。そのため、ウイルス感染によって誘発される宿主細胞由来病原性因子の検出を試みた。インフルエンザウイルス感染発育鶏卵の奬尿膜を超音波破壊し、その可溶性画分をニワトリの静脈中に投与した。ニワトリは汎発性血管内凝固により数分以内に斃死した。この致死活性はヘパリンを静脈内に前投与することによって制御されたことから、本因子は血液凝固系に関与する物質と推定される。汎発性血管内凝固症候群は様々なウイルス感染症で認められる。したがって、この細胞因子はインフルエンザのみならず他のウイルス感染症においても病原性発現に重要な役割を果たす可能性がある。陰イオン交換体を用いた高速液体クロマトグラフィーによって本因子の分離精製を試みたところ、致死活性は0.2M NaCl画分に単一のピークとして溶出された。SDS-PAGEによる解析では、少なくとも3種類のバンドが確認された。67%飽和硫安塩析法によって致死活性を沈殿中に回収することができた。現在、このピーク画分を抗原としてモノクローナル抗体を作出している。H5およびH7亜型インフルエンザウイルスの病原性はそのヘマグルチニン(HA)分子の蛋白分解酵素感受性と相関する。そこで、134株のH5およびH7亜型ウイルスについてRT-PCR法ならびにサイクルシークエンシング法を用いてHA開裂部位のアミノ酸配列を決定し、病原性との関連を調べた。その結果、強毒株の開裂部位C末端側のアミノ酸配列はいすれもK/R-X-K/R-Rであった。このことから、H5およびH7亜型インフルエンザウイルスのHA開裂部位のアミノ酸配列は病原性を予測する指標となることが判った。
すべて その他
すべて 文献書誌 (3件)