骨軟部腫瘍の診断、組織発生及び治療効果に関する病理学的及び分子病理学的研究

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08407008
• 研究種目: 基盤研究(A)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 町並 陸生 東京大学, 医学部, 教授 (30010052)
• 研究分担者: 元井 亨 東京大学, 医学部, 助手 ; 佐々木 学 東京大学, 医学部, 助手 (70178664) ; 森 正也 東京大学, 医学部, 助手 (90210137) ; 堀内 啓 東京大学, 医学部, 助手 (10190240) ; 石田 剛 東京大学, 医学部, 講師 (40223002)
• キーワード: 骨軟部腫瘍 / 病理組織学的診断 / 組織発生 / 治療効果 / p53 / カドヘリン / カテニン / 分子病理学

研究概要

町並は、最近約30年間に自ら診断した骨悪性腫瘍生検・手術例745例及び良性骨腫瘍及び腫瘍様病変生検・手術例1,017例の病理診断を再検討し腫瘍別頻度を明らかにした。骨肉腫については組織学的悪性度分類を行い、悪性度1及び2度の症例11例の予後を、悪性度3及び4度の症例123例の予後と比較し、組織学的悪性度の低い症例の方が有意に予後良好であるという結果を得た。
骨肉腫のp53及びRB遺伝子のLOHを分子生物学的に検索し、LOH陽性例は陰性例に比し化学療法抵抗性であることが判明した。また、骨肉腫ではOB-Cadherin遺伝子の変異型が検索した23例全例に陽性で骨肉腫の生物学的性状に変異型OBカドヘリンが関与していることが示唆された。さらに比較のため、印環細胞型の胃癌についてCadherin-11とCadherinの働きを助ける作用のあるCateninについて検索し、CadherinとCateninは腫瘍の組織型や浸潤・転移に関与していることを示す結果を得た。
軟骨性腫瘍についてはモルフォメトリー、染色体分析、及びp53遺伝子の検索を行い、核面積、二核細胞、染色体分析が良悪の鑑別に有用であり、p53遺伝子の点突然変異が組織学的悪性度の高い症例に認められることを明らかにした。
石田は、レックリングハウゼンの神経線維腫症に合併した多発性の小腸基質腫瘍及び関節内に発生した滑膜肉腫について検討し報告した。堀内は、骨巨細胞腫瘍における多核巨細胞の成り立ちについて、培養細胞を用い、蛍光色素で腫瘍細胞を標識し、単核の腫瘍細胞の融合によって多核巨細胞が生じることを明らかにした。また、骨肉腫のErbB-2の発現を分子生物学的に検索し、その発現は肺転移と相関することを明らかにした。元井は、滑膜肉腫について肝細胞増殖因子(HCG)とc-Metの発現を免疫組織化学的に検索し、上皮成分の発生にHCGとc-Metが関与していることを明らかにした。その他町並は、粘液型脂肪肉腫にVEGFが発現していることを報告した。

研究成果

• [文献書誌] 町並陸生: "骨・関節腫瘍の病理" 日本病理学会会誌. 85(2). 47-70 (1996)
• [文献書誌] 後藤明輝,町並陸生: "骨肉腫におけるp53、Rb遺伝子欠失と化学療法感受性" 日本病理学会会誌. 85(1). 277-277 (1996)
• [文献書誌] 宇於崎宏,町並陸生: "骨肉腫におけるp53遺伝子の変異と術前化学療法の効果及び予後との比較検討" 日本病理学会会誌. 85(1). 227-227 (1996)
• [文献書誌] 鹿島健司,町並陸生: "骨肉腫における変異型OBカドヘリン遺伝子" 日本病理学会会誌. 85(1). 116-116 (1996)
• [文献書誌] T.Shibata,R.Machinami,et al.: "Simultaneous expression of cadherin-11 in signet-ring cell carcinoma and stromal cells of diffuse-type gastric cancer." Cancer Letters. 99. 147-153 (1996)
• [文献書誌] T.Shibata,R.Machinami,et al.: "Dominant negative inhibition of the association between β-catenin and c-erbB-2 by N-terminally deleted β-catenin suppresses the invasion and metastasis of cancer cells." Oncogene. 13. 883-889 (1996)
• [文献書誌] T.Ishida,et al.: "Multiple small intestinal stromal tumors with skeinoid fibers in association with neurofibromatosis 1(von Recklinghausen's disease)." Pathology International. 46. 689-695 (1996)
• [文献書誌] T.Ishida,R.Machinami,et al.: "Intra articular calcifying synovial sarcoma mimicking synovial chondromatosis." Skeletal Radiology. 25. 766-769 (1996)
• [文献書誌] M.Onda,H.Horiuchi,et al.: "ErbB-2 expression is correlated with poor prognosis for patients with osteosarcoma." Cancer. 77. 71-78 (1996)
• [文献書誌] 元井 亨: "滑膜肉腫におけるhepatocyte growth factor及びc-Met-proto-oncogene産物の発現について" 日本病理学会会誌. 85(1). 278-278 (1996)
• [文献書誌] 木田直俊: "粘液型脂肪肉腫におけるVEGFの発現" 日本病理学会会誌. 85(1). 175-175 (1996)