グラム陽性菌における病原因子産生の分子機構

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08407010
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 林 英生 筑波大学, 基礎医学系, 教授 (40033203)
• 研究分担者: 倉園 久生 筑波大学, 基礎医学系, 講師 (90186487) ; 清水 徹 筑波大学, 基礎医学系, 助教授 (80235655) ; 中村 信一 金沢大学, 医学部細菌学教室, 教授 ; 太田 敏子 筑波大学, 医療短期大学部, 教授 (40233134)
• キーワード: 黄色ブドウ球菌 / ウエルシュ菌 / ディフィシル菌 / 毒素 / ストレス応答 / 遺伝子発現調節 / 細胞内情報伝達 / 熱ショック蛋白

研究概要

黄色ブドウ球菌の薬剤耐性を解析し、β-ラクタム剤などの細胞壁合成阻害剤により特異的に誘導される蛋白(35kDa)と遺伝子を同定した。この蛋白は膜蛋白であり、標準株黄色ブドウ球菌(メチシリン感受性)も保有し、染色体にコードされているが、この蛋白のみではMICに変化を与えるほど、強い耐性因子ではない。PBPとは異なるが、膜透過性に関与する可能性がある。水銀、カドミュウムなどの重金属により誘導される蛋白と遺伝子を同定した。この蛋白の遺伝子も標準黄色ブドウ球菌が保有しており、この欠失変異株は水銀やカドミュウムの低濃度で増殖が抑制される。熱ショック蛋白遺伝子の発現調節についてはHSP70オペロン内にコードされる遺伝子hrc37が、シャペロン蛋白の発現を調節していることを証明した。これらの発見は黄色ブドウ球菌の病原因子の産生調節機構を明らかにするために重要な事項である。
ウエルシュ菌の病原因子遺伝子群の発現調節機構の解析がすすみ、細胞内情報伝達機構のより詳細なネットワークが明らかになり、また細胞間情報伝達に関与するフェロモン様物質が明らかになりつつある。ウエルシュ菌の外毒素遺伝子の発現は上位の調節遺伝子(virR/virS)により統括的に調節されていることを発見したが、単に外毒素の産生みならず菌の代謝経路の活性(フォスフォジエステラーゼなど)も調節していることがわかり、さらに、virR/virSの他にもこれに類似した高位調節系があることが判明した。
ディフィシル菌の毒素産生調節に関与する因子とその関連遺伝子を解析して、アルギニンやビオチンの濃度が腸管毒の産生に関与していることが明らかになった。

研究成果

• [文献書誌] Kuroda,M., et al: "HSP70 and HSP60 operons are regulated by a transcriptional factor Hrc37 of the HSP70 operon in Staphylococcus cureus." J.Bacteriol. (1998)
• [文献書誌] Ohtani,K., et al: "Collagenase gene (colA)is locared in the 3^1-flanking region of the perfringolysin O(pfoA)locus in Clostridium perfringens." FEMS Microbiology Letters. 146. 155-159 (1997)
• [文献書誌] Ba-Thein,W.et al: "Genomic diversity in the pfoA region of theta-roxin deficient strains of Clostridium perfringens." Microbiol.Immunol. 41(8). 629-631 (1997)
• [文献書誌] Karazawa,T., et al: "Effect of arginine on toxin production by Clostridium difficile in definedmedium." Microbiol.Immunol. 41(8). 581-585 (1997)
• [文献書誌] Nakamura,S., et al: "Effect of vitamins on toxin production by Clostridium difficile" Anaerobic pathogens. 85-91 (1997)
• [文献書誌] 太田敏子 他: "黄色ブドウ球菌のストレス応答遺伝子の発現調節" 臨床と微生物. 24. 229-230 (1997)
• [文献書誌] Shimizu,T., et al: "The Clostridia:Molecular Biologyand Pathogenesis (Acedcaic Press)" Regulation of taxin psoduction in Clostsidium perfringens, 451-470 (1997)