1.コレラ毒素の水チャネルAQPに対する作用を明らかにすることを目的とし、以下の成果を得た。ヒト小腸mRNAを鋳型とし、AQPファミリーの保存領域のプライマーを用いてRT-PCRを行ったところ、既知の分子AQP-1、-3および-4の断片が得られた。次にこれらをプローブとした小腸cDNAライブラリーのスクリーニング、及びRT-PCRにより、これらAQPの完全長cDNAをクローニングし、転写ベクターおよび発現ベクターに組み込んだ組み換え体を構築した。転写ベクターに組み込んだAQP cDNAからcRNAを調整し、アフリカツメガエルの卵に注射し、卵膜上にAQP分子を発現させる系を確立した。AQP cRNAを注射した卵を低張液に入れビデオモニタで観察すると、水を注射した対照群と比較して有意に水透過性が上昇した。また、発現ベクターに組み込んだAQP cDNAを大腸菌内で発現させ、AQPの大量精製を行い抗体を調整した。 2.O22コレラ菌のO抗原合成遺伝子領域約45kbの全塩基配列を決定し、オープンリーデングフレーム(ORF)を推定した。その結果、O抗原合成遺伝子領域においてO139コレラ菌にはO139特異的な領域8kbが存在しており、その領域内にバクテリオファージ由来の配列が存在していることはすでに明らかになっていたが、O22コレラ菌にも、O22特異的な領域6kbが存在していることが明らかになった。このO22特異的な領域には6種類のORFが存在しており、そのうちの5種類が糖転移酵素をコードしていた。また、O22コレラ菌のO抗原合成遺伝子領域約45kb内に挿入配列が2カ所存在していたが、その挿入配列はO22コレラ菌のゲノムDNA上に少なくとも15以上存在していた。またこの挿入配列はコレラ菌O22とO93とO150にのみ存在していた。
|