研究概要 |
腸管感染症原因菌による下痢発症の機構を明らかにすることを目的とし、小腸上皮細胞膜の水チャネル分子(aquaporin,AQP)に対するコレラ毒素の作用の解析を行った。ヒト小腸からRT-PCR法によりクローニングしたAQP1、AQP3およびAQP4のcDNAをin vitro転写し、得られたcRNAをアフリカツメガエル卵中で発現させた。このAQP発現卵をコレラ毒素で処理し、その後低張液中に移しビデオモニタで体積変化を継時的に記録する方法で、AQPの水透過性がコレラ毒素処理により変化するかどうかを調べた。その結果コレラ毒素は、AQP1の水透過性に対しては影響を与えなかったのに対し、AQP3には抑制的に、またAQP4には逆に促進的に作用する傾向が見られた。コレラ毒素の代わりにアデニル酸シクラーゼの促進剤であるforskolinで処理したところ、コレラ毒素処理群と全く同じ傾向が見られた。したがってコレラ毒素によるAQp3の水透過性抑制およびAQP4の水透過性促進には、アデニル酸シクラーゼの活性化が関与していることが示唆された。それぞれのAQPがリン酸化されているか否かは不明であるが、現在各AQPに対するポリクローナル抗体を作成中であり、これが得られればAQP発現卵に^<32>Pリン酸存在下でコレラ毒素を作用させ、免疫沈降後SDS-PAGEによりAQPのリン酸化が起こっているか否かを調べることができると考えている。
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