研究課題/領域番号 |
08407019
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
泰江 弘文 熊本大学, 医学部, 教授 (40174502)
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研究分担者 |
吉村 道博 熊本大学, 医学部附属病院, 助手 (30264295)
久木山 清貴 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (00225129)
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キーワード | 一酸化窒素 / 一酸化窒素合成酵素 / 遺伝子変異 / 遺伝子解析 / 狭心症 / 冠攣縮 / 心筋梗塞 / 冠動脈 |
研究概要 |
本研究は、日本人に多く見られる冠攣縮の病因を特に一酸化窒素(NO)との関連において検討することを目的とする。特に本研究においては、冠攣縮の遺伝的因子を探る目的で、血管内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)遺伝子変異の検索を始めている。eNOS遺伝子26個の全てのエクソンならびに5′隣接領域の遺伝子をPCR-SSCPで検索した結果、現在までにエクソン7にGlu298Asp変異を、また5′隣接領域にT^<-786>→C、A^<-922>→GおよびT^<-1468>→Gを見出している。またT^<-786>→C、A^<-922>→G、AおよびT^<-1468>→Gはそれぞれがリンクして存在することを判明した。我々はこの遺伝子変異がそれぞれ冠攣縮に有意にかかわっていることをvolunteerを含めた多数例の症例を用いて確認している。今回我々は、これらの変異それ自体がeNOSに発現あるいは機能異常を与えているか否かをin vitroおよびin vivo系で検討した。Glu298Aspに関しては、野生および変異型eNOS遺伝子をCOS-1細胞にtransfectionし、細胞抽出液の最大酵素活性を比較した。結果は野生型を100%とした場合、変異型は93%にわずかに低下していた。現在さらに大腸菌培養系で各組み換え蛋白を発現、生成し酵素学的検討を進めている。一方、5′隣接領域については、その機能的変化が明らかとなった。in vitroの機能解析をルシフェラーゼアッセイを用いて行ったが、その結果、3つの点変異の内、T^<-786>→Cが有意にルシフェラーゼ活性を低下させ、他のA^<-922>→GおよびT^<-1468>→Gは影響を及ぼさないことが判明した。さらに、in vivoの検討では心臓カテーテル検査時においてアセチルコリンおよびニトログリセンによる冠動脈径の変化を調べてみると、野生群に対して変異群は有意にその反応性が亢進していた。以上のことから少なくともT^<-786>→C変異は、直接eNOSの転写に影響を与え、NOの合成を低下させて冠攣縮を引き起こし易い状況にしていると思われた。
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